The Ladder/Yes

近年の Yes アルバムの中でもよい出来だという噂を聞きつけ、手に入れた。

1 曲目でいきなり盛り上がる。しかし、8 人 Yes 時の『Union』(結晶) で『I would've waited forever』以降のしりすぼみを経験した者としては、ここで浮かれるわけにはいかない。

ところが、その後、2, 3 曲目を聴いても、だれる感じはない。4 曲目は Jon Anderson のスキャットに『We Have Heaven』がかぶせてあるという、ちょっとずるい曲。でも、ここではっとさせられるので、よいアクセントになっている。

5 曲目はひたすらポップで、また盛り上がる。アルバム全編にわたって過度のプログレ感を巧妙に抑えつつも、Yes らしさを残してあって、とにかく聴きやすい。8 曲目は始まりからして Yes 流のパワーチューン。これは Yes 色全開。ここまでは高揚感のある曲が続く。

9 曲目からは声・言葉に関係するタイトルになっていて、一気に Yes らしさを増していく。10 曲目は、結局このアルバムだけで辞めてしまった Igor Khoroshev のキーボードが耳に残る。コーラスもすばらしくて、この曲と 1 曲目のためだけに買ってもいい。11 曲目は Steve Howe の繊細なギターと Jon の声、そして Yes には珍しいタブラが印象的。この最後の流れで満腹。噂に違わぬアルバムで、90125 を経たからこそ生まれた作品だと思う。

『The Ladder』は 80 年代にハードロック系バンドを次々と再生・復活させた名プロデューサー、Bruce Fairbairn の手による。しかも制作半ばで亡くなり、これが彼の遺作だ。こわれもの/危機と 90125 のバランスをこれほど巧みに取れる手腕の持ち主だけに、せめてあと一作は彼のプロデュースで聴いてみたかった。合掌。

  1. Homeworld (The Ladder)
  2. It Will Be A Good Day (The River)
  3. Lightning Strikes
  4. Can I?
  5. Face To Face
  6. If Only You Knew
  7. To Be Alive (Hep Yadda)
  8. Finally
  9. The Messenger
  10. New Language
  11. Nine Voices (Longwalker)

ラダー

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